1型糖尿病について
糖尿病内科
1型糖尿病について
糖尿病内科
「1型糖尿病」は「生活習慣病の一種である2型糖尿病」とは全く異なる性質の疾患です
決して稀な疾患ではなく毎年「約1万4千人が発症」「全国で約21万人が治療」を受けています
膵臓にあるインスリンを分泌するβ細胞が急速に破壊され「インスリンが出なくなる」
主に自己免疫学的機序により、膵臓にあるインスリンを分泌するβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリンが出なくなるため慢性高血糖状態となり、糖尿病を発症します。
以前はIDDM(インスリン依存性糖尿病)やⅠ型糖尿病と表記される事もありましたが、現在では“1型”糖尿病と表記が統一化されています。生活習慣病の一種である2型糖尿病とは全く異なる性質の糖尿病で、急速にβ細胞が破壊され、様々な自己抗体が陽性になります。
抗GAD抗体、抗IA-2抗体、抗インスリン抗体、抗ZnT8抗体などがそれにあたります。
若年者(小児)に多い病気ですが「成人にも発症」
「小児だけの病気ではない」
もともと若年者(小児)に多い病気ですが、最近は小児1型糖尿病の発症率の増加および発症の若年化が言われています。
発症のピークは思春期にあり、それ以降は男女とも発症が低下する事が分かっています。
しかし、成人にも発症する事がありますので、小児だけの病気ではありません。
遺伝子との関係は?
遺伝する?遺伝しない?
通常は遺伝しません。
しかし、疾患感受性遺伝子としてHLA遺伝子、インスリン遺伝子、CTLA4遺伝子、PTPN22遺伝子などが報告されており、これらの遺伝子を有する患者では家族内発症も認められます。
前年健診までは血糖値上昇の指摘はなかった・・・
突然起こることが特徴
糖尿病の典型的な症状といわれる口渇、多飲、多尿、体重減少がよくある症状です。小児の場合は夜尿(おねしょ)で気づかれるケースもあります。インスリンが分泌されないと、血糖の上昇に伴い尿糖が排出され、浸透圧利尿が増えるため、脱水になります。
また、インスリンの不足はエネルギーの同化(蓄積)が出来なくなり、痩せていきます。
さらに、インスリンが全くなくなった状態ではケトン体が産生され、ケトーシスやケトアシドーシスという危機的状態となり、昏睡や死に至るケースもあります。
症状は突然起こることが特徴で、前年の健診までは血糖値の上昇は指摘されなかったといわれる患者さんがほとんどです。また、風邪症状など先行感染を伴う場合がよくあります。
様々な1型糖尿病患者さんをみてきた「糖尿病専門医」と「看護師」「管理栄養士」が
チームとしてサポートします
インスリンの自己中断はケトアシドーシスに原因に
自己中断は決してしないで!
厳格に血糖をコントロールすれば、合併症なく糖尿病ではない人と同じような生活が出来ます。
1型糖尿病でありながら、プロ野球選手になった人もいます。
しかし、血糖コントロールを怠ると、目の合併症(糖尿病網膜症)で失明したり、腎臓の合併症(糖尿病腎症)で透析になったり、神経の合併症(糖尿病神経障害)で足を切断する可能性もあります。
また、動脈硬化や癌、認知症といった恐ろしい病気を引き起こす可能性もあります。
インスリンの自己中断は前述のケトアシドーシスの原因になるので、決してしないでください。
血糖値測定
血糖値測定器について
当院ではアボットジャパンのフリースタイルリブレを主に使用しています
ご自身で血糖測定をする場合はもちろんセンサーを用いると持続血糖モニタリングにも応用できます。
また他院からの紹介の患者さんなどこれまで使用していた血糖測定器をそのまま使用していただくことも可能です。
カーボカウント法
応用カーボカウント法
当院では管理栄養士とともに応用カーボカウント法
の習得のサポートを行います
1型糖尿病の発症は食べ過ぎや運動不足が原因ではないため、厳格な食事療法は不要です。
そのかわり食べるカロリーに応じてインスリン量を適切に調節する必要があります。
血糖値を上昇させやすい炭水化物(カーボ)量に応じたインスリンを注射することを応用カーボカウント法といいます。
当院では管理栄養士とともに習得のサポートを行います。
応用カーボカウントの参考例
炭水化物10g = 1カーボ と換算します。
【インスリン/カーボ比】
1カーボの炭水化物に対して必要な超速効型インスリンの量
例)インスリン/カーボ比=1.5 の人が6 カーボの食事を摂る場合 6×1.5=9.0 となり超速効型インスリン 9 単位必要
【インスリン効果値】
1 単位の超速効型インスリンで低下する血糖値
イン スリン効果値 50の人は 1 単位の超速効型インスリンの投与で約4時間後に血糖値が 50mg/dl 低下
【食事に対するインスリン量】
1.5×6.2=9.3 ⇒ 切り捨てして9単位
【食後血糖を補正するためのインスリン量】
(220-140)÷50=1.4 ⇒ 切り捨てして1単位
⇒ 合計9+1=10単位の超速効型インスリンを注射する必要があります。
インスリン皮下注射・インスリンポンプ
インスリン補充の方法
1型糖尿病患者さんは膵臓からのインスリンの分泌がほぼ枯渇している場合が多いため
インスリンを補充する必要があります
方法としてインスリンの皮下注射とインスリンポンプによる方法があります
インスリンポンプ療法と
注射療法の比較
インスリンポンプ療法 | 注射療法 | |
---|---|---|
インスリン注入方法 | ポンプ+注入セット | ペン型注射器+針 |
インスリンの種類 | 超速効型 | 時効型+超速効型 混合型+超速効型など |
注射回数 | 2日~3日に1回の カニューレ留置 |
1日に1回~5回 |
インスリン注射に
よる治療
インスリン皮下注射
1型糖尿病の患者さんは多くの場合1日4回
インスリンの皮下注射を行う必要があります
生理的インスリン分泌に近づけるために1型糖尿病患者さんは多くの場合1日4回インスリンの皮下注射を行う必要があります。
ライフスタイルにあわせて注射するタイミングや量を調整していきましょう。
食事量に関係なく分泌される基礎インスリンのかわりになるもので1日1回注射する必要があります。
1日の血糖値のパターンに応じて選択し量を設定します。
使い捨てタイプのインスリンを使うことが多いですがカートリッジ製剤という詰め替えタイプのものを使うことも可能です。
詰め替える手間はかかりますが費用は安くなります。
インスリンポンプによる治療
持続皮下
インスリン注入療法
当院ではインスリンポンプの新規導入を行っています
インスリンの皮下注射で良好な血糖コントロールが得られない方はご相談ください
CSⅡ
バッチ式
インスリンポンプ
健康な方のインスリン分泌パターンを皮下注射だけで再現することは困難ですが、インスリンポンプという機械にプログラムを入力し使用することでより近づけることができHbA1cの改善につながります。
食事の度に皮下注射する手間を省くことができ外出先など注射しにくい場合も機械の操作で簡単に行うことができます。
インスリンを注入するためのチューブがないパッチ式インスリンポンプが登場しました。
皮下注射を行うことなくワイヤレスでインスリンを注入することができます。
リアルタイムに血糖の変動傾向を把握でき、低血糖や高血糖時にアラート機能で危険を知らせてくれます。
また低血糖予測機能により事前に設定した値になる前にアラートで通知してくれます。
1型糖尿病の方にも投与が可能な
抗糖尿病薬
αグルコシダーゼ阻害薬・SGLT2阻害薬
αグルコシダーゼ阻害薬は食後過血糖がある場合、1型糖尿病患者さんにも投与が可能です。
また、SGLT2阻害薬という糖を尿から排泄する薬の一部も使用可能になりました。
今後1型糖尿病患者さんが内服可能な抗糖尿病薬が増えていく可能性があります。